TD研究所の活動報告 ~つぶやき~

その時々の活動や災害のなかで、考えていること、気になること、していることなどについて、不定期につぶやいています。(たい積場の個別案件は守秘義務の関係で記載しておりません)

2024年11月20日~21日
JOGMEC令和6年度鉱害環境情報交換会参加

【20日:講演会、懇親会(姫路)~21日:生野鉱山見学】
JOGMEC主催の令和6年度鉱害環境情報交換会が姫路で開催され参加しました。

初日の講演会では、5講演を拝聴しましたが、デジタル活用・モニタリング・ドローン・ロボット・スターリンクなどのワードが溢れ、休廃止鉱山のニーズを再認識させていただきました。んっ?カタカナばかり...
例えば、「自動充電ポート(車庫)付ドローン」を現場に常駐配置して、パソコン1台で何時でも何処からでも操作を行ってドローン巡視ができたり、「360度カメラ搭載車輪式自走ロボット」を坑道で自走させ、その映像を3次元モデル化して時系列的な変化を可視化するなど、どれも近年課題となっている現場管理の人員不足や世代交代による経験不足などを補完するための動向が伝わってきました。
たい積場の底設暗渠などは、人が入って点検するのが困難な狭小断面のものもありますが、現状では、直径60㎝程度の断面であれば自走ロボットの走行も可能とのことでした。
今後の現場管理において、人間にしかできないことと、ロボットやドローンなどが行えることを取捨選択しながら、本質を捉えて合理的な管理体制が構築されていくことを期待したいと思います。

2日目は、姫路からバスで1時間程度北上した場所にある「生野鉱山:三菱マテリアル㈱」の坑廃水処理施設とたい積場、観光坑道を見学させていただきました。
観光坑道は一般の方でも見学可能ですので、鉱山の坑道に興味をお持ちの方にはお勧めします!
歴史の古い鉱山なので、坑道も江戸時代に掘削されたものから昭和時代の坑道まで見ることができて、採掘の順序も分かり易く工夫されていました。生野銀山(観光坑道):URL https://www.ikuno-ginzan.co.jp/index.php
この時期は、紅葉も始まっており、見学に彩りを添えてもらいました。

主催頂いたJOGMEC金属環境事業部 及び 現地をご案内頂いた三菱マテリアル㈱生野事業所の皆さま、ありがとうございました。

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2024年11月14日
地盤工学会 TC221国内委員会 第5回委員会出席

【休廃止鉱山の環境管理に関する最近の動向と遠隔モニタリング―METI 第6 次基本方針、産総研の最新研究―】
保高徹生氏(産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 研究グループ⾧、北海道大学 工学部客員教授)から上記講演がありました。
同氏は、中央鉱山保安協議会及び金属鉱業等鉱害防止部会の委員でもおられます。
特定施設に係る鉱害防止事業の実施に関する第6次基本方針(令和5年~14年度)では、鉱害防止工事51鉱山、坑廃水処理74鉱山が対象となる。
なかでも「災害時のリスク対応強化」では、東日本大震災後に改正された技術指針に適合したたい積場(集積場)安定化対策工事は未だ対象の約半数が残存している。また集中豪雨や地震等の自然災害が増加している。引き続き、集積場安定化対策工事を進めるとともに、自然災害に対するレジリエンス(停電対応や資機材の供給確保)を一層強化する必要があるとし、その対応策が述べられています。
遠隔モニタリングでは、低電力遠距離通信(LPWA)を利用して、山間部に存在する坑廃水処理施設の水質(pH・EC)を遠隔把握するなどの現地試験が行われており参考になりました。実用化に至れば管理業務の一部を担うことが可能となり業務の軽減にもなるので、今後に期待したいと思います。

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2024年10月27日
地盤工学会 関西支部 ふるさと地盤診断ウォーク参加 【大阪平野の水害と対策~水都・大阪をめぐる~】

大阪ベイエリアにおける水運の歴史を学びながら、標高の低さを体感し、津波や高潮などの水害に対する対策の様子をGRI財団の理事である北田博士と巡りました。
大阪市のゼロメートル地帯は、御堂筋の西側ほぼ全域の広範囲に亘り、過去に台風による高潮被害を受けており、その対策として堤防の嵩上げや水門の整備が行われています。
昭和9年室戸台風、昭和25年ジェーン台風では、現在のような高潮対策も施されておらず、当時は天気予報もないため突然台風が襲ってきて、御堂筋西側が浸水して、住民は避難もできずに多数の犠牲者をだしました。その後、昭和36年第二室戸台風では、高潮対策も進み、天気予報による事前避難を行うなど人的のみならず浸水被害も大幅に減り、更には平成30年台風21号では、関西空港橋がタンカーによる破損を受けたものの、大阪市は浸水被害を回避することができています。それまでの整備が機能した素晴らしい成果です。
但し、これは時間に余裕をもって台風接近を把握し、水門の閉鎖や堤防に設けられた多くのゲートを締めるなどの準備を万全に行うことができた結果でもあります。
一方、巨大地震(南海トラフ地震)ではどうでしょう。
現状では地震の発生は予知できないので突然発生する事象であり、地震発生後に津波が到達するであろう1時間程度の限られた時間で水門やゲートの閉鎖が間に合うのか、或いは、地震による地盤の変動によって水門などに変位が生じた場合、正常に機能するのかなど、地震に対する備えには限界があることも感じています。
とは言え、これまで整備された先人のご尽力に敬意を表します。
津波・高潮ステーション:URL http://tsunami-osaka.jp/
尻無川水門:URL https://www.pref.osaka.lg.jp/o130350/nishiosaka/river/shiri-gate.html

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2024年5月23日
地盤工学会 TC221国内委員会 第4回委員会出席

【Challenges and Advances in Mining Waste in Brazil】
”ブラジルにおける鉱さい・鉱業廃棄物管理の課題と進歩" と題して、Roberto Kochen氏(GeoCompany所属・サンパウロ大学名誉教授)の来日講演がありました。
ブラジルでは、2019年1月にブルマジーニョ鉱山(鉄鉱石)のたい積場が崩壊して、多数の死傷者及び環境問題など地域社会に大きな影響を与えました。
たい積場のかん止堤が崩壊する瞬間の映像が右記URLです。https://www.youtube.com/watch?v=L1Feq5-y5J0
この崩壊の原因の1つに、モニタリングシステムが上手く機能していなかった可能性があり、予兆を捉えることができなかったことに言及されています。
たい積場の管理において、日常のモニタリングが重要なことは当然として、そのモニタリングを行う位置や計器の設置方法、更には総合的な判断が行えるようなシステムが適切でなければならないことを再認識した講演でした。

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2024年1月1日
令和6年能登半島地震

令和6年能登半島地震により、犠牲となられた方々にお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。(2024年1月2日)


【令和6年能登半島地震について】
1月1日16時10分に石川県能登地方の深さ15~16㎞でマグニチュード7.6の地震が発生しました。
「津波」は、その痕跡などから4~5m以上、「地殻変動」は、輪島で最大4mの隆起、珠洲で最大3m程度の西向きの変動があり、能登半島北岸の広い範囲で隆起により陸化した地域があることがわかりました。
「震源断層」は、能登半島北東-南西に延びる150㎞程度の南東傾斜の逆断層、「海底地すべり」は、能登半島東方約30㎞にある海底谷の斜面が複数崩壊、最大箇所は長さ約1.6㎞、幅約1.1㎞崩れ、最大50m深くなっていたようです。
現在の土木や建築構造物の設計では、地震の揺れに対する耐震或いは免振は基準等により考慮されていますが、今回のような地盤の大きな隆起や変動は予測する術もないので、私の知る限り考慮できないと理解しています。
従って、構造物の重要度に見合った隆起や変動が発生した場合の、損害を最小限にとどめるリスクヘッジは必要なのかもしれません。
何れにしても、自然の圧倒的な破壊力に対峙することの難しさを考えさせられる地震です。

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2023年6月26日
地盤工学会 TC221国内委員会 第2回委員会出席 【TD研究所より話題提供】

たい積場(集積場)の概念などなどとして、「たい積場の概要」「鉱さいとは」「管理上の課題」など、17ページのPPT資料を発表しました。PPT資料の一部は、当HP内の「たい積場概要」に掲載すると共に、経産省のたい積場に係る職員の方々への研修資料としてもTC221を介して活用頂いています。
発表内容は、鉱山におけるたい積場の役割、たい積場に堆積される鉱さいの物性や堆積方法、たい積場の構造や形状、各種水路の種類、更にはたい積場のリスクから管理体制の課題までを網羅した内容となっています。
特に、たい積場の管理体制の課題では、現場技術者から発信された現場の異常発生などの悪い(聞きたくない)情報が組織途中で留まることなく、速やかに正確に経営トップまで伝わる体制つくりが重要であることを述べています。

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2023年1月31日
地盤工学会 TC221 (Tailings and Mine Waste) 国内委員会 委員受嘱

【TC221国内委員会設立】
委員長:清田隆(東京大学生産技術研究所)、幹事:山田岳峰(鹿島建設)、顧問:安田進(東京電機大学)、岡村未対(愛媛大学)以下13名の委員による技術委員会が発足、期間は2026年3月までの約3年間
TD研究所も委員を受嘱しました。
【設立趣意(一部抜粋)】
かつて我が国にも多数の鉱山が存在し、鉱さいダム(以下、堆積場)の建設も盛んであったが、国外の安価な鉱石の流入によってその多くは既に閉山されており、関連する技術開発・研究活動の鈍化、実務者・後継者不足が問題となっている。一方国外では、新たに建設される堆積場は増加し続けており、我が国でも残された堆積場の保守管理が必要であることから、堆積場安定性評価技術の高度化は依然として重要な課題である。地震などによる堆積場の不安定化とそれに伴う土砂災害・鉱害、およびその対応については、国内外問わず報告されており、我が国では東日本大震災後に改正された技術指針に基づき、対策工事等が進められている状況である。
鉱さい自体の特殊性とその堆積場の安定性評価の重要性から、近年国際地盤工学会ISSMGEでは鉱さいの諸特性と堆積場の検討に特化した技術委員会TC221が設立された。また、委員長のProf, Ramon Verdugo (Chile)より、我が国の技術者・研究者と地盤工学会に対して積極的な参画と活動へのサポートが依頼されている。(以下省略)

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